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『面会交流支援事業の公的援助等に関する要望書』を提出しました

目次

面会交流支援事業の公的援助等に関する要望書

法務大臣 森 まさこ 様
厚生労働大臣 加藤 勝信 様

2020年7月5日
一般社団法人 面会交流支援全国協会
代表理事 二宮 周平

 私たち, 一般社団法人・面会交流支援全国協会は, 子どもと別居親との面会交流は, 子どもたちのためにあると位置づけています。子どもが安心して親との離別に向き合うことを可能にし, 親子の関係が継続するための支援が必要であると考えます。別居親との安定的な関係は, 愛着・愛情関係の基礎を培い, アイデンティティの形成など, さまざまな視点で子どもの成長に重要な要素となり得ます。そのため, 親との離別の際に, 別居親との健康なつながりを継続し, 新たな関係を構築することができるような仕組みが大切です。親は子どもの健やかな成長を見守りながら親子の関係を継続していくこと, 成長に合わせて子どもの心に配慮しながら, 子育てを続けていくことが重要であると考えます。一方で, 同居中に家庭内に暴力や歪んだ力関係があった場合などには, 早急に面会交流を実施することが子どもにとって過度な負担となり, かえって子の福祉に反する状況を招く場合もあります。そのため, 別居親との健康な関係が継続されるための仕組みに合わせて, 面会交流を真に子の福祉に資するものとするための制限のあり方についても検討する必要があると考えます。
 実際に葛藤をはじめとするさまざまな問題を抱えているために, 第三者による支援なしには面会交流ができない家族が数多く存在します。しかし, 葛藤が高くても, 第三者機関の支援があることで, 別居親と会う機会を子どもたちに保障することができ, ひとときの支援を得て継続的な面会交流へと移行していくことが可能となる家族も多いのです。一方で, 暴力(DVや児童虐待)の問題を抱えている場合には, 第三者機関は, トラウマや恐怖心などから子どもや被害者である親を支え, 守る役割を担っています。自分たちでは面会交流を実施できない当事者や, 面会交流の取決めがあっても, 交流が子の福祉を害する危険をはらむ当事者もいます。このように, 面会交流を支援する第三者機関が, 子どもの権利を保障し安全を守るために重要な役割を担っています。
 しかし, 支援方法や安全基準の作成, 支援員の研修等は各団体に委ねられ, 各団体に対する公的な財政支援もなく, 利用する当事者への利用料補助も限られています(ひとり親家庭支援事業の一環としての低所得者への補助であり, 実施自治体は10前後)。支援団体及び支援員の善意に依拠する構造は, 支援団体の全国展開を妨げ, 各地の当事者が利用したくても利用できない状況を生み出しています。
以上のことから, 関連する事項も加えて下記を要望します。

1 支援の適正を確保するための認証・研修制度の構築を求めます
 当事者が安心して面会交流支援を利用することができるように, 支援者に必要なスキルや注意すべき事が基準として設定され, その基準を満たしていることを認証する仕組みを構築することが必要です。その基準や研修プログラムの策定, 認証の提供を目的として当団体を設立しましたが, 政府機関を含む関係諸機関, 専門家, 面会交流支援をしている現場の人たちが協力し合うことで, はじめて信頼できる, 持続可能な制度として整備することが可能となります。

2 面会交流支援団体の実情に即した公的な援助を可能とする仕組みを求めます
 多くの支援団体は, 事務局機能及び支援の場所の確保, 研修費用や支援員の交通費・日当, 損害保険の加入等必要な経費をほぼ手弁当で支弁しています。継続的な支援を可能にするために支援団体の財政基盤を安定化させ, 当事者の利用料の軽減や無料化を図るためには, 社会的支援として行政からの公的な援助が必要です。社会的支援を受ける資格として1で指摘した認証制度は意義がありますが, 制度構築前でも, 地方自治体の施設を面会交流支援の場所として提供するなどさまざまな公的な援助が可能です。こうした公的な援助があれば, 面会交流支援団体を全国各地で設立することが可能になります。

3 家庭裁判所と面会交流支援団体との連携を可能とする制度の構築を求めます
 父母の葛藤が高い場合には, 面会交流支援団体を利用することが有用な事例もあります。家庭裁判所がそうした判断をする際には, 現場の面会交流支援の実情を踏まえることが必要です。他方で, 面会交流の安全性を確保するためには, 家庭裁判所の判断が不可欠です。子どもの福祉を実現するために安全性に問題がないか, 福祉を害するような面会交流の拒絶や逆に面会交流の強制がないかなどの判断です。安全性が確保された調停や審判であれば, 支援者も安心して支援を行うことができますし, いろいろな葛藤を抱えながら面会交流を続けようとする親への支援も容易になります。

4 子どもの意思を尊重する仕組みを求めます
 面会交流の主人公は子どもです。離婚の協議や調停・審判において面会交流の合意を形成する場合も, 面会交流支援の現場でも, 子どもに必要な情報を提供し, その意思を聞き取り, 尊重する取組みが不可欠です。2017年改正児童福祉法は, 「社会のあらゆる分野において, 児童の年齢及び発達の程度に応じて, その意見が尊重され, その最善の利益が優先して考慮され, 心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない」(2条1項)と定めています。この理念に沿った取組みを保障する仕組みが必要です。

5 総合的な当事者支援を求めます
 面会交流が困難になっている家族は, 当事者だけでは克服できない問題を抱えていることがあります。面会交流支援の現場では, さまざまな課題を抱える家族に対応し, 適切な支援に繋ぎ, 家族構成員みんなの福祉を実現する必要性を実感しています。別居親との面会交流を継続的に実現するためには, 期間を限って提供される面会交流支援だけでなく, 当事者が抱えるさまざまな課題を克服するための支援, 例えば, 障害や暴力などに対応するため, 発達障害対策(育児支援)や被害者のレジリエンス獲得のためのカウンセリング, DV加害者プログラムなど, 養育支援やカウンセリング, 福祉的援助など総合的な支援が必要です。

以上

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